日本財団 図書館


 

GPSはもともと軍の必要性から生まれたシステムであり、提供しているサービスも民間に提供されている標準位置決定サービス(SPS)と軍用の精密位置決定サービス(PPS)の2種類がある。この2つの差は精度で、民間用では水平位置決定の誤差が100mになるよう人為的に精度が落とされており、これを選択利用性(SA)と呼んでいる。
SAがない場合の誤差は約10mとこれまでの各種航法機器に比べて、群を抜いた精度を持っていると言える。INS/IRS等の慣性航法装置は飛行時間とともに誤差が集積していく欠点があるが、GPSでは常に位置をアップデートするので誤差は集積されない。FANSで目指している航空機間の管制間隔短縮には、この高精度の衛星航法が不可欠である。
(3) GPSの弱点
オールマイティに見えるGPSだが、弱点もある。誤差が飛行の各段階で予め決められた基準を超えた場合に警報を出す能力を完全性(インテグリティー)と呼ぶが、現在のシステムでは時間がかかりすぎることが指摘されている。この解決方法としては地上局で衛星をモニターし、必要に応じて故障情報をユーザーに伝えるGPSインテグリティー・チャンネル(GIC)や受信機側で5個以上の衛星からの電波を受信してクロスチェックすることにより異常を検知するRAIM1がある。ただしRAIMでも極地域では受信できる衛星の数に限りがあり、GICとの併用が考えられている。
(4) ディファレンシャルGPSと広域補強システム
SAがかけられた状態での航法誤差100mはエンルートではほとんど問題とならないが、進入着陸では無視できない数字である。この誤差を少なくするために考えられたのが、ディファレンシャルGPSである。これは既知の場所に設置したGPSと同じ発信機からの電波を受信することにより、誤差の補正値を算出しユーザーに放送する方式である。
この方式を使用すれば100m程度の誤差は10m以下にできると言われており、カテゴリー1程度の進入着陸誘導に利用できると思われる。
広域補強システムとはGPSなどの測位衛星と通信衛星を組み合わせ、地上に設置したモニター・ステーションで測定した誤差情報や測位衛星の完全性に関する情報をユーザーに送信するシステムである。これによりユーザーは精度向上と迅速な故障情報の入手が図れることになる。米国ではWAAS2と呼ぶシステムが開発中で、1997年からのサービ

 

1 RAIM:Receiver Autonomous Integrity Monitor
2 WAAS:Wide Augmentation System

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION